とやまの技 VOL.05

(株)杉本美装

金属着色

塗れないのは空気だけ

和紙等で着色した杉本美装のオリジナル照明

「空気以外は何でも塗装できる!」そう言って快活に笑う杉本美装の杉本和文社長。オフィスには、その言葉を裏付ける数々の塗装サンプルや同社のオリジナル商品が所狭しと並べられている。一見、金属にしか見えないものが実はガラスだったり、漆器のように見えるものが金属だったりと、その意外性に驚かされる。コロナ期には抗菌性の高い銅をマスクに吹き付けてみたこともある。「見た目が悪くてダメだったけどね(笑)」と杉本さん。なんでもやってみようという、「ものづくり」に対するチャレンジ精神は、小さな工房が集まっていた高岡市内免で育った環境が影響しているのかもしれない。「オレ、こんなん作ってみた!とか、これ作ったんだよって、みんなで技術を教え合い、競い合って切磋琢磨した」。それによって技術が精密になったり、新しい技法が生まれたりしたという。

裏は金属、表は陶器のような仕上がり

杉本美装も高岡銅器の伝統的着色技法を改良し、金属の綺麗な結晶が浮かび上がる「結晶露出」を開発。銅器や仏具をはじめ、時計や箸置き、建材部品などのオリジナル製品を生み出した。このものづくりスピリッツを「変わり塗装」といわれる独自の美術塗装にも発揮。金属や和紙、木くずなどを混ぜた塗料をさまざまな素材に吹き付けることで、本物の質感を生み出すことに成功。塗装による表現の幅を広げた。また仕上げに加工を施すことで、建材やインテリア、照明など広範囲のプロダクトに応用ができるようになった。

「変わり塗装」でいろいろな表現が可能に

こうしたオリジナルの塗装技術をもつ杉本美装は、いつの間にか「かけこみ寺」の異名で知られる存在となった。高岡銅器をはじめ、建材関係者だけでなく、作家からも信頼が厚く、塗装で困った人が頼る最後の砦となっているからだ。レースのように繊細に編まれたガラス作品を「塗装で金属っぽくして欲しい」や「(プロダクトに)未来感を出してほしい」など、リクエストの難易度は高い。作家や依頼者のイメージを鮮明にするため、さらに細かく聞き取り、サンプルを複数提示するなど真摯に取り組む。物理的にムリなこと以外は、ほぼ断ったことは無い。困った人を放っておけず、やれそうなことはやってみようと試みる職人気質がここにも顔を覗かせる。

杉本和文社長は、ユニバーサル塗装やメッキ風塗装など豊富なアイデアの持ち主

高岡銅器の長い歴史によって培われた伝統技術を若い世代に繋げる機会や場が減ってきていると感じる杉本さん。「鋳造や着色技術など伝統工芸の技術はもちろん、塗装技術や失われてしまった技術も含めて復興できるような施設が作れたら」とものづくりの未来にも思いを馳せる。

(株)杉本美装

富山県高岡市長慶寺977
TEL 0766-28-8260

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