とやまの技 VOL.03
(株)平和合金
鋳物制作/高岡市戸出栄町

伝統産業の手業で ブロンズに命を吹き込む

鋳物の町・高岡で約120年の歴史を持つ「平和合金」。アート好きを自任する人でも会社名を聞いて「あぁ、あの公園のモニュメントの…」などとピンとくる人はまずいないだろう。しかし、実は作家や美術界を縁の下で支える重要な役割を担っている。いろんなニーズに応じて、ブロンズやアルミ合金からさまざまな形や表現を生み出す。その繊細な工程の大部分を人の手で行うことで作品に命を吹き込み、血を通わせる鋳物会社である。

創立当初は主に花器や茶道具といった小型の鋳物製品を製造。その後、二宮尊徳像など大型鋳物の製造にも取り組み始めた。現在は主に美術鋳物といわれる銅像やモニュメント、アート作品。仏具鋳物と言われる仏像、社寺建築の鋳物を制作している。手のひらサイズの小さなものから高さ16メートルにおよぶ巨大なものまで多種多様。

1メートルを超える大きな作品は自硬性鋳型といわれる砂型鋳造法で原型から鋳型をおこし、小型で30センチぐらいの複雑な細部のものなどはワックス(蝋)で原型を作るロストワックス鋳造で行うなど、それぞれの作品の大きさや特徴に合った鋳造法で制作する。原型の製作から鋳造、仕上げまで工程のほぼすべてが高度な技術をもつ職人の手作業によるものである。

その高い技術力を求めて、現代アートの巨匠や芸大で教鞭をとる作家さんなど全国、ときには海外からも依頼が舞い込む。「作家さん一人一人、形が違えば仕上げも言葉も違うので、そこを表現するのが難しいです」と、四代目社長・藤田和耕さん。しかし作品を納めたときに、「さすが平和さんだね!と言ってもらえると嬉しい」と顔をほころばす。

同時に「作家さんと組んで仕事をすることで力も知識もつく」と話す。だからこそ「伝統の技術で、人の手で作る。手業にこそ価値がある」と考える。人に見られるものを作ることは、工業製品を作るのとは違う楽しみがあり、大きなやりがいにも繋がるのだとか。

工場内では勤続30年を超える熟練職人に混じって働く若手も多い。中には美大を卒業後、平和合金に就職。仕事がおわった後に作品制作に励む人もおり、こうした作家の卵の活動にも理解を示す。

(株)平和合金
富山県高岡市戸出栄町56-1
TEL 0766-63-5551