高岡銅器の
唯一無二の着色技法を可能に
鮮やかで深みのある青は「Oriiブルー」と称される。伝統工芸士の折井宏司社長が高岡銅器の伝統的な着色方法を発展させるかたちで独自に開発した。銅着色は薬材や炎を使って表面を発色させる。微妙な加減で色や文様が違ってくるため、同じ表情がふたつとない。斑紋ガス青銅色や斑紋孔雀色といった従来なかった鮮やかな色合いを薄い銅板に施すことが可能になり、用途が建築分野に大きく広がった。色と文様をデザイン化してアパレルに展開するといった異業種とのコラボレーション企画も増えている。
新色の開発に取り組んだきっかけは下降線をたどる銅器産業への危機感だった。「他に例のない銅器製造の分業化が進んだ高岡だからこそ私たちのような色付け屋が生まれた。家業を継いだばかりでがむしゃらに実験を繰り返した中で偶然できた色を技術的に確立し、テーブルの天板や時計など『私がほしいと思うもの』に仕立てていった」と言う。
「本焼(ホンヤキ)」「糠焼(ヌカヤキ)」「煮色(ニイロ)」「鉄漿(オハグロ)」「青銅」といった伝統的な着色技術の継承に心を砕く。「需要の減少で技術を用いる機会がなくなり、このままでは絶えてしまう恐れがある。当社の事業をきっかけに伝統的な色や技術が再評価され、新たな創作につながってほしい」と願う。