KOGEI ✕ 富山 VOL.02

Bed and Craft

南砺市井波

工芸をもっと身近に

「KIN-NAKA」2階床の間、松竹梅のオブジェ(前川大地氏)

瑞泉寺の歴史と共に発展してきた南砺市井波。寺院彫刻の技法を受け継いだ井波彫刻の工房が今も軒を連ねる。約8000の人口のうち200人以上が彫刻師という全国でも稀有な存在だ。この町で2016年、職人に弟子入りできる日本初の宿「Bed and Craft」がスタートした。プロデュースした山川智嗣さんは富山市出身。学生時代を東京で過ごしカナダに留学、上海で活躍後、井波に居を構えた建築家だ。
「なぜ富山にUターンしたのかとよく訊かれるんですが、そんなつもりは全然なくて、たまたま自分の好きな町が井波だったんですよ」と笑う。しかし、魅力ある町にもかかわらず観光客の滞在時間はわずか1時間弱。観光客を町に留め工房や工芸作家と触れあえるようにするには…。山川氏の出した答えがBed and Craftだった。

「KIN-NAKA」階段天井、木彫りシャンデリア(前川大地氏)

一棟ごとのインテリアやオブジェを一人の作家に任せる“マイギャラリー制度”を設け、宿泊を通して工芸を体験してもらう趣向の宿。かつては町の診療所だった「RoKu」、元料亭の「KIN-NAKA」など趣のある一棟貸しの宿は全6棟。客はその一棟一棟で作庭家や木彫刻家、漆芸家の世界観を感じることができる。さらに深く工芸を体験したい宿泊客に向けては、職人と協力し、さまざまなワークショップを充実させた。

「季ノ実」工芸品やフレグランスなどを購入できるショップ

当初8割近くが外国からの宿泊客だったが近年は「コト消費にお金を使いたい」という日本人客の増加もめざましい。住空間で作品を身近に感じ、ワークショップでの体験を通じ、改めて工芸の価値に気づく人も多い。「この町でしかできない産業をもっと育てていけたら」と山川氏。工芸の町、職人の町の可能性を信じてやまない。

Bed and Craft

〒932-0217
富山県南砺市本町3丁目41
(株)コラレアルチザンジャパン
(代表取締役・山川智嗣)が運営する一棟貸し宿。
TEL 0763-77-4138(10:00~21:00)