ARTIST INTERVIEW VOL.13

漆芸家 畦地 拓海

面(おもて)に浮かび上がる
表には現れないもの

人間の根源的な感情に訴えかけるような色彩や線。人とも動物とも違う異形の眼を持つ仮面の表情。尽きることのない創造のエネルギーが、一挙に噴出したかのような作品は、観る者を引きつけ圧倒する。漆芸家・畦地拓海さん自身を映すような、強烈なインパクトが心を揺さぶる。良い意味で、それまで抱いていた漆芸のイメージをあっさり取っ払う人である。

Spirit Board「ムーサ・マンティ」2025

生まれは京都府亀岡市、父は西洋アンティークの骨董商という環境で育った。“美”が身近な存在だったからか、美術や音楽が好きな少年だったという。日本画、洋画、彫刻、漆芸などいくつもの専門分野をもつ美術専門高校「京都市立銅陀美術工芸高等学校(現・京都市立美術工芸高等学校)」に進学。そこで畦地さんは漆芸と出会った。魅了されたのは完成品ではなく、表には見えてこない制作過程。プロセスを重ねていく工程で得られる肌質やテクスチャーを作る面白さが漆にはあったという。

仕上げの「摺り漆」でしっとりとした質感に

富山大学では、さらに基礎から蒔絵、変わり塗り、螺鈿と多様な漆の技術を学ぶ。大学院進学後は「タイの文化に触れ、その中で制作したい!」と、1年間のタイ留学も経験。学生時代から今に至るまで、地域と繋がるイベント、ジャンルの異なる作家とのコラボなど、とにかくやりたいと思ったことは、迷わず実行に移す行動派。それが人との出会いに繋がり、活動の幅も広がった。
そうして、新たに習得した技術、さまざまな体験や感性が醸成され、やがて次々に作品となって表出する。意識的にインプットに努めることもある。例えば、何もしない日をつくる、手を動かす、線を描いてみるなど。すると、「気持ちを裏切るような線が現れる」といった面白い展開が起こるという。

「門出の面〜虹を超えた先へ」2025

コロナ禍頃から制作するプリミティブな仮面も、社会や文化に対峙する自分の内面やそれを守る守り神のような存在が表出した作品。畦地さんが「やりたいことと作品がかみ合ってきた」と語る代表的なモチーフ。制作するときはいつも「自分のやりたいことがきちんとできているか」を自問する。そして、「ダサいと思ったらやめる」覚悟をもつ。完成した作品に対しては、いつも同等の自信と不安が生じるという。おそらく、この自信と表裏一体の不安こそが作品に向かい続ける衝動となるのだろう。
今後は「もっと海外で展示をしたい!」と畦地さん。観る人にさまざまな感情を呼び起こす、その作品に世界の人々が接したとき、どんな反応がかえってくるのだろうか。思いを巡らせ、期待が膨らむ。

「よさこい」の踊り手やベーシストなど、多彩な顔を持つ

畦地 拓海

Takumi AZECHI

1990年、京都府生まれ。2013年、 富山大学 芸術文化学部 デザイン工芸コース卒業。2014 ~ 2015年、タイ パタナシン芸術大学チャンシン校に留学。2016年、富山大学大学院 芸術文化学研究科 芸術文化学専攻 修了。制作拠点を置く富山や出身地の京都をはじめ、日本国内外を問わず作品を発表している。

https://urushi-takumiazechi.jimdofree.com/

Instagram