ARTIST INTERVIEW VOL.14

ガラス造形作家 小島 有香子

重なり合うガラスに 柔らかな光が遊ぶ

幾重にもかさなるガラスの層が創り出す多彩な表情。瑞々しい葉脈のような、深い峡谷の水面のような、自然の一部を切り取り凍らせたがごとく凜として佇む。観る角度や光の加減によっても印象が大きく変わるオブジェ。ガラス造形作家・小島有香子さんの手による作品は、独自の世界観を放つ。

Layers of Light -Leaf

小島さんが用いる積層ガラスとは、建築資材の板ガラスを重ね合わせて接着し、研磨する技法。「ガラスの彫刻」とも言われるもので、一般によく知られる吹きガラスに比べ、作家の数も少ない。小島さん自身「どちらかというと自分は理数系なので積層ガラスの幾何学的なところがシックリきたのかも」と振り返る。小島さんが積層ガラスに出会い、ガラス造形作家になるまでには、幾つもの巡り合わせがあった。

作品は複数の研磨の段階を経て完成する。

「何かものづくりがしたい」と進学した多摩美術大学は当時、願書提出の段階でコースを決めなくてはならなかった。なんとなく「面白そう」と選んだのが、立体デザイン専攻クラフトデザイン専修のガラスコースだった。そんな出会いだったためか、最初はあまりガラスに興味を持てずにいた。3年生の後半、やっとガラスが面白くなってきたのに中途半端な気持ちで卒業を迎えた。そこで金沢卯辰山工芸工房入所を志すも、選に漏れてしまう。アルバイト生活をしながら、ふと思いつき通い始めた東京の吹きガラス教室の工房オーナーが、偶然にも富山ガラス造形研究所の出身だった。

Layers of Light #12-4

オーナーに富山行きをすすめられ、迷うことなく富山にやって来た小島さん。大学4年間、ガラスを学んだ実績があるにもかかわらず、初心に戻って造形科(基礎コース)で一から学び直し、その後、研究科に進み知識と技術を深めた。課題の合間、何気に作った積層ガラスの小作品が先生方の目にとまった。気泡のない接着面と綺麗な層の重なりに、「向いているんじゃないか?」と言われた。確かに、吹きガラスに比べ、制作をコントロールしやすいところが自分には合っていると感じた。素材を貼り合わせ、カットし、磨きをかけ、少しずつ仕上げていく過程も楽しい。思いがけず進む道が定まった。

「デザインを考えるのが一番苦労」と笑う。

「富山は創作活動が続けられる環境でした。もし、別の場所だったら卒業後に制作を続けることが困難でしたでしょうね」富山ガラス造形研究所卒業後も、富山ガラス工房のレンタル工房で制作を続けることができた。このことは、小島さんが富山に残り、ガラス造形作家として独立する大きな要因となったと話す。今は富山の自宅に工房を構えて制作に励む傍ら、積極的に多くの異業種の人たちと出会い、交流を深める。「これからは組み作品の制作や海外での発表も増やしていきたい」と意欲も語る。今後も、さまざまな巡り合いや挑戦が、彼女の作品に可能性という光をそそぎ、積層ガラスの世界に更なる美しさを創造していくのだろう。

小島 有香子

Yukako KOJIMA

1979年、石川県金沢市生まれ。千葉県出身。2001年、多摩美術大学卒業。2006年、富山ガラス造形研究所 研究科修了。2007年、『国際ガラス展・金沢2007』第10回展記念特別賞、『第54回 日本伝統工芸展』高松宮記念賞。2011年、『第4回 現代ガラス大賞展・富山2011』大賞。2018年、『富山ガラス大賞展・2018(国際展)』銀賞。2024年、「International Festival of Glass」にワークショップ講師として招待参加(イギリス)、「All you need is glass!」(International Glass Symposium)招待参加(チェコ)。2025年、「小島有香子ガラス展」(阪急うめだ本店美術画廊/大阪)他、個展・グループ展・美術館展示等多数。 富山市ガラス美術館をはじめ、国立工芸館(石川)、Novy Bor Glass Museum(チェコ) などに作品収蔵。ザ・リッツカールトン西安(中国)、グランドセイコースタジオ雫石(岩手)、東京ミッドタウンガレリア他、多数に作品設置。NHK教育「新日曜美術館」(2007年9月)、NHK BSプレミアム「美の壷」(2021年3月)に出演。

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