ARTIST INTERVIEW VOL.08

木工デザイン Shimoo Design

使い手の感性と響鳴するデザイン

『Shimoo Design』は、共に木工作家の下尾和彦・さおり夫妻のユニットによるブランドである。コンセプトは日本古来の文化や伝統を取り入れた「日本を感じるデザイン」。富山市八尾町の山あいに建つギャラリーには、お皿やトレーのほかテーブルやベンチなどが使用感をイメージしやすいようディスプレイされている。どれもがコンクリート打ち放しのモダンな空間と調和し、無駄のない美しさが際立つ。

黒浮様 Brion 神殿の柱を思わせるデザイン。スタッキング可能なBoxもある。

二人が転機を迎えたのは40歳前後の時期。「作家は一人でデザイン、制作をするものだと思い込んでいたけれど、それだとできることに限界がある」と感じたという。そこで、多くの人に自分たちのデザインを届けられるよう、デザインと制作を分けることにした。以来、和彦さん、さおりさんが意見を出し合ったデザインを工房のスタッフが制作。最後の仕上げはお二人が担当するというスタイルが確立した。
その『Shimoo Design』の代名詞が「浮様<ふよう>」と名付けられたシリーズだ。木肌のざらっとした手触り。ふちは焼け焦げて欠けている、そして割れ目を銀の鎹<かすがい>がつなぐ。「浮様」の世界観を体現する木皿である。この一皿がもつ“不完全の美”が、日本をはじめとした世界中の料理人の感性を揺さぶる。

浮様 丸皿 エイジングやダメージを加えたオリジナルの皿。

着想の基となったのは約20年前、和彦さんがお寺から譲り受けた古材だった。寺院の一部として長い年月を経た、ストーリーを感じる古材の存在感に惹かれた。「デザインでこの感じを表現したい」と、木目が美しい栗材にオリジナルの技術でエイジングやダメージ加工を施した。こうして生まれた独特の存在感を放つ「浮様」は、県内の有名シェフに使用されたのをきっかけに、SNS上でも評判を呼び、東京のペルー料理店をはじめ、イタリアや南アフリカなど国境を越え愛用されている

エイジング加工を施した椀(左)と未加工の椀。

「あれこれ考えるより自分たちが欲しいと思うものを作ります。あとは使い手に委ねますね」とお二人。生み出されるプロダクツは、シンプルで合理的なデザインゆえに使う人も、場所も選ばない、柔軟性を備える。そんな中にあって唯一、季節も用途も限定するものがある。「TONGARI SANTA」がそれだ。下尾夫妻が独立後、毎年欠かさずクリスマスに向け制作するこだわりの木彫り人形。毎年、国内外から900を超える受注がある。彫りは井波の彫刻師、着色をさおりさんとご家族、顔を和彦さんが仕上げる、作り手の温もりが宿るサンタだ。これもまた、『Shimoo Design』のストーリーを感じさせるシグネチャーピース(代表作)の一つである。

毎年買い求めるファンも多い「TONGARI SANTA」。

Shimoo Design

下尾和彦、下尾さおり夫妻によるデザイン・ユニット。両氏とも家具づくりの修業後、1997年、富山市八尾町にアトリエを設立。1998年、2001年、「工芸都市高岡クラフトコンペ」グランプリ受賞。他銀賞、奨励賞など受賞多数。2023年12月、ギャラリー開設。 ギャラリー:富山市八尾町松原251-5(※事前予約制) Mail: info@shimoo-design.com

https://shimoo-design.com

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